働く人にとって腰痛は1番身近な「労災」
厚生労働省の発表によれば「休業4日以上」の労災(職業性疾病)において、発生した件数全体の約60%を占めているのが「腰痛」です。
こうして見ると、腰痛は働く人にとってある意味「一番身近な労災」といえるでしょう。
そして、腰痛は労災全体の中で件数が多いというだけでなく、その数は毎年増加傾向にあります。
腰痛の発生には、仕事の内容や生活習慣など様々な要因が想定されます。そのため、特定の業種だけでなく、どのような仕事をしていても発生するおそれがあるのです。
また、近年では運送業や製造業に限らず、座りっぱなしのオフィスワークでも発生件数が増えているようです。
今回は、特にオフィスで取り組む腰痛予防のヒントについて紹介します。
デスクワークに伴う腰痛の原因
デスクワークをしていて腰が痛くなる大きな原因は、長時間同じ姿勢で作業することで動く機会が少なくなってしまうことにあります。座った状態でずっと作業を続けることが腰の筋肉にとって負担となるのです。
なぜ負担となるのか、理由は大きく2つあります。
① 筋肉は長時間同じ姿勢で使い続けると、疲労しやすいため
② 背中から腰についている筋肉で、座っている姿勢を支えているため
1つ目の理由について解説すると、筋肉を使う際、動かして使うよりも止まった状態で使い続ける方が筋肉ははやく疲労します。例えば、歩いているよりもずっと座っていたり、立ったままの方が腰の筋肉がはやく疲労するということです。
筋肉は疲労することで硬くなり、その影響で血行が悪くなったり、うまく働けなくなることで痛みを感じるようになります。
つまり、同じ姿勢でいること、それが長時間になることで痛みを出しやすくなるということです。
長時間座った後に立ち上がる際や、歩き出す際に腰に痛みを感じるのもその影響になります。
長時間同じ姿勢で筋肉を使い続けた影響で疲労により筋肉が硬くなり、筋肉がうまく伸び縮みできなくなることで、動き出しでうまく働けずに痛みを感じます。筋肉の持久力(スタミナ)が落ちてくると起こりやすい症状となります。
2つ目の理由について、腰の筋肉にはカラダを支える役割があり、座っている際にはこの役割が大いに必要になります。デスクワークでは基本的に椅子に座った状態で行うため、自ずと腰の筋肉に負担をかけることになります。
デスクワーク中は姿勢や腹筋を意識しなければ背中が丸くなってしまいやすく、どうしても腰を曲げた状態で行うことが多くなってしまいます。仕事に集中していると、気づかない内に頭が前に移動し、さらに背中や腰が丸くなりやすくなります。このとき、腰の筋肉は体が前に倒れないようにするために働くため、この状態が続くと負担は徐々に大きくなり、次第に腰の痛みへと繋がっていきます。
これら2つの理由により、デスクワークでは腰の筋肉に対して大きな負荷をかけてしまうため腰痛になりやすくなってしまいます。
また、座っている方が楽だから腰への負担も少ないだろうと思う方は多いかもしれません。しかし、実は腰だけのことを考えると、立っている時よりも座っている時のほうが腰のクッションの役割を果たす椎間板への負担は大きいことが分かっています。
このように、座っている姿勢が楽というイメージはあるかもしれませんが、デスクワークには腰痛を伴いやすい原因がたくさんあるということがお分かりいただけたでしょうか。
じゃあ、仕事を変えないと、腰痛は良くならないの?と考える必要はありません。腰痛になりにくいデスクワークの方法や対策を知れば、腰痛は予防・改善することができます
。対策① 環境を整える
では、デスクワークをする上で腰痛に悩まされないようにするためにはどんなことに気をつければよいのでしょうか。
1つ目の対策としては、デスクワークする環境に目を向けてみましょう。デスクワークする環境を整えることで、腰痛になりにくくなることが可能です。
腰の筋肉を痛めないために考えるのは姿勢だけではありません。デスクの周りの環境にも気を配りましょう。
椅子は低すぎたり、高すぎたりしませんか?
低すぎる場合
低すぎることで腰が大きく曲がってしまい、腰の筋肉や椎間板などの負担を増やしてしまいます。その状態で長時間の作業をしてしまうと、腰を痛める危険性は高くなってしまうので注意が必要です。
高すぎる場合
椅子が高すぎて、足が宙に浮いた状態で座っていると、腰の筋肉はバランスを保つために普段よりも大きく働きます。それが腰の負担を増やしてしまうこととなり、痛みを出しやすくする恐れがあります。
椅子の高さは、自分の足が地面にしっかりとつく高さに設定することをおすすめします。
対策② 働き方を変える
2つ目の対策として、働き方を変えることを意識してみましょう。具体的にどういうことかというと、ここでは2つの例を挙げたいと思います。
こまめに休憩をとることを意識する
デスクワークで腰が痛くなる大きな原因として、筋肉を長時間同じ姿勢で使い続けることで疲労してしまい、その影響で痛みを感じるようになると解説しました。
つまり、こまめに休憩をとることで、筋肉が疲労しきらないようにすることが大切になります。
コンピュータを用いた作業を行う人の健康を守るためのガイドラインである「VDT(Visual Display Terminals)作業における労働衛生管理のためのガイドライン」では、一連続作業時間は1時間を超えないようにし、“連続作業と連続作業の間に10~15分の作業休止時間を設けること”とされています。
これからもわかるように、同じ姿勢で長時間作業することは勧められておりません。
「デスクワーカーの休憩は30秒でも立つことが大事」でも解説されてますが、立って休憩することで腰痛の悪化予防や精神的疲労の軽減にも役立つことが分かっており、休憩することにもメリットはあるのです。
人間の集中力が持つ時間は概ね1時間程度と言われています。集中力が切れたときにトイレに行ったり、立ち上がったりすることで腰の筋肉に休憩する時間を与えることを意識しましょう。結果的に、そうすることで腰の筋肉を痛めにくくするとともに、精神的疲労の軽減や業務効率を高くすることにもつながります。
日々気付いた時の対策が大切!
今回はデスクワークと腰痛の関係について、さらにその対策について解説しました。
仕事を永く続けるため、健康に働くためには、腰痛にならないことが重要であり、なったのであればうまくコントロールすることが重要となります。
それができるようになると、自然と仕事効率もあがり、より充実した仕事の時間を過ごすことができると思っています。